富士山
こんにちは、トサカです。
みなさんは真島俊夫の「Mont Fuji 〜北斎の版画に触発されて〜」という曲を聴いたことありますか。
今日はこの曲についてお話ししようかなと思います。
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吹奏楽のオリジナル曲をよく書いていたほか、ジャズ、フュージョン、ゲーム音楽など、様々なジャンルの音楽を吹奏楽に翻訳するアレンジャーとしても活躍していました。
彼のオリジナル作品の中でも、「日本的な題材と西洋の技法の融合」を目指した曲をよく耳にする機会があります。
彼は、これまでにそのような曲を三曲書いてきました。
三つのジャポニスム
そして、先程も上げた富士山です。
私はこの中で、富士山を好んでよく聴きます。それは、この曲が「吹奏楽の文法」に丁寧に則っているからです。
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ちょっと昔話。
高校三年生だった時、吹奏楽コンクールに出場した際の自由曲が真島俊夫の「三つのジャポニスム」でした。
初めてこの曲を聴いたとき、自分はその曲の情景をまざまざと思い浮かべることができたのです。
自分の地元である宮崎は南国なので、実際に鶴を見たことも、雪に凍える川を見たこともありませんでした。でも、その光景が、今まさに目の前で行われているかのように感じられたのです。
自分は、真島俊夫さんの曲は「画集」のようなものだと考えています。
音楽を聴いているはずなのに、その一音一音がまるで筆のように動き、様々な情景を聴者の頭の中に描くことができる作曲家だと考えています。
「三つのジャポニスム」と「鳳凰が舞う」はまさにその情景描写に特化した曲で、連続して魅せられる一枚一枚の「日本的風景」に圧倒されることを楽しむ曲だと思います。
では、このように情景描写を得意とする作曲家がきちんと吹奏楽の文法を押さえた曲を作るとどうなるか。その結果が「富士山」だと思います。
ほかの曲よりも、拍子やメロディの繰り返しがストレートで、楽曲の構成をみてもわかりやすいものとなっています。
これまでの「情景描写に特化した変化球」と比較するとすがすがしいまでの直球っぷり。
そこには、この曲のモチーフとなった浮世絵との関係があるのではないかと考えます。
北斎の書いた浮世絵は海外にまで渡り、日本らしさ(ジャポニスム)として海外の芸術家の作品に取り入れられたそうです。
もしこの曲が富士山そのものに感慨を受けて作られたのなら、もっと山の雄大さをたたえ、そこに四季の彩りを加え入れるような写実的な曲になっていたかもしれません。
そこで海外と日本の文化の架け橋的存在である「浮世絵」という要素を持ち出したことで、このように和を表現しつつもかなり吹奏楽に寄せた曲になったんだろうと思います。
ではでは
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