後藤を持ちながら

後藤を持ちながら

吹奏楽から仮面ライダーまで

ヒゲとボイン

こんにちは、トサカです。

あんよを始めたときから、ぼくは日々成長を続けています。肉体的なものはもちろんですが、精神的にも成長し、かつては見えなかった景色が今では見えるようになりました。今日はそんな話をしていこうと思います。

 

ユニコーンというバンドをご存知でしょうか?

奥田民生がメインボーカルをしているバンドといえばわかる方も多いかもしれません。タイアップで言えば「重版出来!」のOPソングである『エコー』とかでしょうか。

全員が50歳を越えた今でこそ「私はおっさん~」みたいな曲を出していますが、90年代はそのルックスの良さから「アイドルバンド」として活動、音楽雑誌の巻頭グラビアを任されることもしばしあったそうです。

アイドル的な人気を誇っていた彼らが当時作った曲のなかに、「ヒゲとボイン」という曲があります。

 

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その名の通り「ヒゲ」と「ボイン」、そして「僕」の三人がこの曲には登場します。

 

まず出てくるのはボイン。軽くて明るいアメリカンロック調のこの曲は、冒頭からアホみたいな歌詞で始まります。

僕のデスクの隣の 痩せてるくせにボインは

花見の時にキスして それからなにもない 

 続いて出てくるのは「ヒゲ」です。

社長は若いくせして ヒゲなんか生やしちゃって

「君を見てると昔の ぼくを見るようだ」 

基本的にこんな感じで曲は続いていきます。なんで俺は知らん会社の色恋沙汰の話を聞かにゃならんのか。高校生だったぼくはこの曲がシングルカットされている理由が本気で分かりませんでした。バブルで浮かれてた時代ならこういう曲も流行ったのか…?

当時のぼくは、この曲のことがぼんやりと嫌いだったのだと思います。「忍者ロック」などのようにおふざけ100%の曲でもないし、かといって「スターな男」のようなラブソングでもない。演奏している彼らの姿勢がつかめないことが、この曲を好きになれない一因でした。

 

でも、大人の階段…というか読解力が上がり、彼らが何を言いたいのかが先日やっとわかりました。「二兎を追うものは一兎をも得ず」という話だったのです。

 

「ボイン」は主人公である「僕」に詰め寄りません。その理由は先程の引用の続きにあります。「あなたはいつも仕事でしょう」。

「ヒゲ」は主人公である「僕」にこう言い聞かせています。「女にうつつを抜かすと私のようになれないよ」。

つまり「僕」は、仕事に生きるほどの覚悟もうつつを抜かすほどの勇気もない、その間で板挟みになっているすべての「人」たちの代弁者であるのです。

この曲のサビで、「僕」はこう嘆きます。

あぁ 男には 辛くて長い二つの道が

あぁ 永遠に深いテーマさヒゲとボインが 手招きする 

この環境はあくまでバブリーな世界線、ぼくらが過ごす低成長期とはだいぶ物の見え方は違っています。それに、たぶんこれを読む人のなかに「異性との出会いで遊びまくる」なんて人はいないでしょう。だからこの曲の状況自体はあまりイメージしにくいものかもしれません。

しかし、うつつを抜か「したい」と思っている趣味を持つぼくにとって、この歌詞は非常に刺さるものだと気づいたのです。どっちつかずだと、結局どっちともうまくいかないよと、この曲の二番で歌われています。きっついなぁ。

 

ユニコーンは、「同年代の自分が体験したかもしれない世知辛さ」を歌うことにかけては天才的な才能を持っています。

アイドルバンドだった時代には、働き盛りの人が直面するであろう困難や、そんななかで働くことの意義を高らかに歌い上げています。おっさんバンドとなった現在も、「わたしはオジさんになった」なんて歌っちゃいます。同年代の働く人々の愚痴のはけ口として機能していた彼らは、間違いなく「スター」でした。

 

でも、ぼくはやっぱりバカな曲のほうが好き。

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ではでは。