後藤を持ちながら

後藤を持ちながら

吹奏楽から仮面ライダーまで

獣でケガする私たち(ギギゼベガグスパダギダヂ)

こんにちは、トサカです。

 

「獣になれない私たち」第一話を見ました。

実際のところもう二話まで進んでいるのですが、そちらの方はまだ観ることができていません。ドラマを見ようと思って初めて、社会人になると「一時間、テレビの前に座る」時間がなかなか作り出せないことに気づきました。今週末は全く時間が取れないからなんとか二話をどこかで見ておきたいと思っています。

これは、どこか「破綻」してしまっている人々が織りなす群像劇です。苦しさを前に出そうと思ってもうまく表現できないOLである新垣結衣が、そんな自分とすこしずつ決別しながら生きていく…。みたいな話になるのかなぁと考えながら観ていました。

 

第一話のラスト、新垣結衣がこれまでとは全く違う服を着て出社し、社長に業務負担の改善を言い渡すところは完全に「仮面ライダークウガ」第二話でした。もうこれ以上誰かの涙を見たくないと叫びながら、燃え盛る教会の中でクウガに変身する五代勇介(オダギリジョー)と、悲痛な出来事を胸に抱えこれまでとは全く違う装いをする新垣結衣。そしてパワーアップした二人は、目の前の悪い状況を打ち砕けるほどの力が存在していたという点もよく似ています。

www.youtube.com

クウガ第二話、観てね

 

さて、「獣になれない私たち」を見ようと思っていることを友達に話したところ、こうした返事が返ってきました。

あれ結構視聴率苦戦しているらしいね。バクシーシ爆死-シ。  

まだぼくはそのとき一話を録画したまま見ていない状況だったので何も言えず、その話はそこで終わったのですが、帰宅した後も気になったのでこのドラマを見た人の感想を色々と探してみました。

すると、結構「一話でリタイア」する方がいてびっくりしました。

多くの方が、「怒鳴り散らす社長と出来損ないの部下に板挟みになっている状況」があまりにも痛々しく、見るのを断念しているそうです。確かにあの辺は見ていて胃が痛くなる描写が多かったですが、ここまでのものだとは思いもしませんでした。

 

クウガを観ていた頃、当時まだぼくは2~3歳でした。まだ右も左もわからないような年齢です。しかし、本気で仮面ライダークウガになろうと思ったことはありませんでした。いくら五代や一条さんやクウガがかっこいいとはいえ、燃え盛る火の中に立てば変身できるなんて考えたことはないし、グロンギ族もこの世には存在しないと信じていました。まだ小さいながらも、作り話と現実との区別ははっきりしていたように思えます。

しかし、そんなぼくでも畏れ慄き、つい最近までその恐怖のイメージに(無意識ながらも)うなされていた回がクウガにはあります。メ・ギャリド・ギというグロンギが出てきた第14話、15話です。

クウガに出てくるグロンギ族という生命体は、人を多く殺せば殺すほどポイントがもらえるという「ゲゲル」を行っています。ルールに則っていかにリント(人間)を殺せるかを競う種族なのです。この時点で、彼らと対話で解決するのは不可能であるとわかります。

このメ・ギャリド・ギというグロンギももちろんゲゲルに参加します。彼はリントの道具を使ってゲゲルに参加した初めてのグロンギです。彼が使ったリントの道具、それは「トラック」です。東京都三鷹市でゲゲルを開始したメ・ギャリド・ギ。彼は被害者を轢いた後、何度も何度もバックしながら丁寧に踏みつぶしていきます。その器用で残忍な方法でメ・ギャリド・ギはどんどんポイントを稼いでいきます。

袋小路に追い込んだ女性三人を追い詰めるときに無機質に流れてくる「バックします」という音声が本当に恐ろしく、今でもたまにこの時と同じような状況に追い込まれる夢を見ます。まっすぐの道の先に行き止まりがあり、目の前にはバックで迫ってくる巨大トラック。押しつぶされそうになった瞬間にいつも目が覚めます。

 

作り物、作り話だとわかっていてもなお恐怖を駆り立てられることがあります。このドラマ、獣になれない私たちも視聴者の底にある「理不尽な恐怖」であったり「どうにもならない現状への激しい怒り」を一話から掻き立てていたのでしょう。それは、やはりこのドラマの脚本や演出が優れているからではないかと考えられます。

村上春樹地下鉄サリン事件についてヒアリングを行った大著「アンダーグラウンド」を書いた時、「腹が立った」「気持ち悪くてしばらく地下鉄に乗れなくなった」という感想を読者からいただいて不謹慎ながらも嬉しく思えたという話があります。ただの本が人の気持ちをここまで揺さぶることができるのかと感動したそうです。このドラマは「ただのドラマ」でありながら人の気持ちをがくがくに揺さぶっていると考えられるでしょう。これからも見逃せません。(早く続き見ないとな…)

 

ではでは。