後藤を持ちながら

後藤を持ちながら

吹奏楽から仮面ライダーまで

か~もんべいべ~アメリカ! 吹奏楽に合うのか?

こんにちは、トサカです。

 

国民みんなが歌えるような曲が少なくなった現代。そんな音楽業界の中で、今年のメガヒットソングを決めろと言われたら間違いなく多くの人がこの曲を推すでしょう。

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か~もんべいべ~ アメリカ!でおなじみ、DA PUMPの「U.S.A」です。暇を持て余したちびっこくんが、この曲のサビを歌い叫びながら元気よく踊っている姿をショッピングモールの休憩所なんかでよく見かけます。

そのダサ…先鋭的な衣装やPVに度肝を抜かれて、何回も聴いているうちにいつの間にかはまってしまう。そんなループに落ちてしまった人が少なくないようです(ぼくもその一人)。

ちなみに、こんなに「先鋭的」な格好をしているのにはちゃんとした理由があります。詳しくはこのブログに書かれてあるので読んでみてください。

 

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さて、ぼくは吹奏楽で打楽器を演奏しています。当然、こういった「多くの人に耳なじみのある曲」もたくさん吹奏楽で演奏してきました。

昔のぼくも含め、わりと大学まで吹奏楽を続けてきた人たちはこういった「編曲ポップス」を避けたいと考えているように見えます。吹奏楽の良さを存分に生かした岩井直溥真島俊夫の書いたポップスをしたいという態度もまあわからんことはないです。

がしかし、やっぱり客席で「耳なじみのある曲」が流れると周りの空気が変わります。クラシックばかりで少しだれ気味だった会場に大河ドラマのOPが流れだした途端、みんな前かがみになって聴きだした演奏会のことを思い出します。やっぱり「知ってる曲」というのはそれだけで充分求心力があります。観客のことを考えるのなら、そこを無下に否定はできないと思うのです。

 

そういった「耳なじみのある曲」のなかでも「吹奏楽で仕上げやすい曲」と「そうでない曲」があります。先程述べた大河ドラマは言わずもがな、バンドサウンドを主体にした明るめのJ-POPなんかはかなり吹奏楽になじませやすいものだと思います。この辺りは編成を柔軟に対応できる吹奏楽の強みですね。

 

では、今回話題にしている「U.S.A」はどうか。

これは最悪レベルの噛み合わなさです。ぜっっったい吹奏楽に合わないのです。電子音楽吹奏楽は水と油。全くかみ合わないのです。

 

この曲に限らない話ですが、テクノポップの神髄は「音の物量」です。

この曲ではギターやシンセ、人力では難しいであろう音数のドラムがそこかしこで聴こえてきます。電子音が多すぎて、一回聴いただけではその音の物量に押し流されてしまうでしょう。その物量の多さによって高揚感が生まれます。そして、そのこまごまとした音がたくさん聴こえてくるほど、人は「そうではない音」、つまりISSAの歌声に耳を傾けます。そのド直球なメロディーに、人々はぐっと心をつかまれます。

 

(わき道)

そもそもテクノポップを「ガッツリ歌もの」として売り出す人たちってそんなにいないと思うんですよね。変な髪型をした三人組のお兄さんYMOをはじめとして、電気グルーヴPOLYSICS中田ヤスタカプロデュースのPerfumeきゃりーぱみゅぱみゅ岡崎体育など、ちょっとかわったアプローチの人が多い印象です。

小室哲哉はここを上手く両立してますね。テクノとしてかっこいい打ち込みと、わかりやすく癖のない音楽がそこにあるように思えます。なんで引退したんじゃ…。

(わき道終わり)

 

さて、このこまごました音を吹奏楽で再現するとどうなるか。

この曲の良さを完全に殺してしまうのです。

電子音だからこそ無機質に鳴らすことができるのです。あの音楽をそのまま人力でやろうとすると、かなり力んでしまいます。こまごまとした電子音が「吹くべき連符」になってしまったとき、そこにはどうしても「必死さ」が生まれてしまい、この曲の持つ均等な高揚感や無機質さが死んでしまうのです。

特に冒頭の「C'-C'-C'-C'-C'-C'-C'-C'mon, baby 」というところ。あれを吹奏楽でやるとただのタンギングの基礎練になってしまいます。あそこは電子音の「ブツ切り」という魅力があってはじめて成り立つ箇所なのです。

 

では、この曲は演奏してはいけないポップスなのか。そうではありません。

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この譜面はかなりいいです。

吹奏楽が苦手とする打ち込みというジャンルから、がっつりロック調の曲に変貌しているのです。一番のサビには原曲で特徴的だったこまごまとした音なんてほぼなく、ガッツリバンド全体でコードを吹きまくっています。ドラムの16ビートも合わさって「やたらと勇ましいブラスロック」にその姿を変えています。曲終わりにはもはや原曲が迷子になってしまっているほどの勇敢さがあり、大胆な編曲にゲラゲラ笑いながらそのカッコよさに思わず手を握り締める自分がいました。

 

こういったアレンジを聴くと、まだまだ編曲ポップスも捨てたもんじゃないなと思います。

というわけで、ロケットミュージックから発売の「U.S.A」。演奏会のアンコールなんかにいかがですか?

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ではでは。