後藤を持ちながら

後藤を持ちながら

吹奏楽から仮面ライダーまで

ファンファーリアの鳴る時間

こんにりは、トサカです。

 

三年前のちょうどこの時期、急ぎ足で同期ととあるホールに向かっていました。ちょどその日は部活の幹部での話し合いがあったため、すぐにそちらに赴くことができなかったのです。さらに、自分たちが思っていたよりも開演時間が一時間早いことに到着直前に気づいたために、第一部のポップスステージを聴くことができないというミスをやらかしていました。ぼくらはいじけながら会場に入りました。

会場は観客でいっぱいで、二人で並んで座れるところはもうどこにもないように思えました。しかし、観察力の高い同期は席を見つけてくれました。「一番前が空いてるよ」。というわけで、ぼくらは「第二部からいきなり一番前の席で聴きだした客」として最前列に座りました。

 

指揮者台の前には一台のスネア。何が起こるのか考える間もなく、誰もいないステージにスネア奏者が入ってきました。彼が叩き始めたのは「ボレロ」です。まもなく入ってきたのがトランペットソリスト。有名なラヴェルボレロのフレーズを吹き出します。フラッシュモブ形式でボレロを演奏するのか、粋な幕間演奏だとそのときは考えていました。

しかし、だんだん演奏は崩れていきます。全く別の曲を演奏しだす人、BTTFのドクのコスプレをして出てくる人、暴走族のバイクの音を模したサックスを吹きながら舞台袖から乱入してくる人、ひっちゃかめっちゃかになりながらも最後は全員でラヴェルを演奏し終えることができました。まさに「目の前」の奏者たちからアホやらかしながらも凄腕の技術を見せつけられて、ぼくらは非常に興奮しました。これまで行った演奏会の中で、一番こってりした幕間演奏でした。

 

www.youtube.com

 

第二部の一曲目がこの「祝典のための音楽」でした。この最初の一音は非常に印象的で、今でもその衝撃を覚えています。これまで聴いてきたどの音楽とも違う「サウンド」なのです。うごめくフリューゲルホルンとサックスの音をかき分け、ひな壇に登った直管群が壮大なメロディを奏でます。一番前に陣取ると、彼らの暴力的なまでに大きな音がぼくらを包み込んでくれます。すぐに聴いただけでは理解できない難解さとこれまでにない柔らかなサウンドにぼくは惹かれました。

 

それ以来、ぼくはこのバンド「ファンファーリアムジカ」の演奏会に行くときは前列に陣取るようにしました。昨日の演奏会でも、ぼくは当時一緒に行った同期と一緒に三列目に陣取りました。

 

ファンファーリアオルケストとは、金管楽器、サックス、打楽器とコントラバスで成り立っている音楽形態です。ブラスバンドよりも立体感があり、吹奏楽よりも純度が高い音楽です。国内でこの形態の音楽をやっているバンドは他にはあまりないそうで、いつもは別の音楽形態をやっている人ほどこのバンドサウンドには驚かされるはずです。

今回の演奏会でもくっきりはっきりと聞こえる「木管金管」で奏でる連符や、中低音のゴリゴリした対旋律、そして何よりもあの独特な楽器構成による和音の響きを最前列で体感してきました。

 

サックスと金管がメインの楽器となるため、どちらかと言えば「吹奏楽」よりも「ビッグバンド」に近い音がするんですよね。吹き方はジャズではないけれど、その音には確かにビッグバンドで体感する「シンプルな煌びやかさ」があります。そのサウンドをクラシックの文法で鳴らしてみるとどんな音がするのか。前例がほぼいない中、このバンドは手探りながらもその実験を繰り返しているような気がします。今回はポップスステージ及びこってり幕間演奏なし、全力でこのサウンドをシンフォニックに響かせるという気概がありました。(個人的にはこのこってり幕間演奏楽しみにしていたんですけどね…。)そして、節々のユニゾンを聴いてその実験は見事成功だったとぼくは感じました。

 なんか、ぼくも実際に演奏したくなっちゃうような、そんな演奏会でした。とりあえず土曜出勤が無くなったら楽団探そうと思います。その前にきちんと防音対策した個人練習の環境を作らなきゃ…。マンションの掲示板で苦情を言われたので現在はやめているのですが、そろそろ再開しても大丈夫ですかね…?

 

ではでは