後藤を持ちながら

後藤を持ちながら

吹奏楽から仮面ライダーまで

屍人荘って全然変換できないね

ミステリー、コメディ、ホラーをろくに包丁も入れずに圧力鍋にぶち込み、ぐつぐつと煮えたった「それ」を臆面もなく視聴者にぶつけるクリエイターがいました。

その名を「堤幸彦」。ケイゾクTRICK、SPEC…。どのドラマも(映画も)10分と観れば「あ、これ堤さんっぽいな」と判別できるくらいその匂いは強烈です。今回観た映画はそんな彼から大いに影響を受けたクリエイターから産み落とされた一品。「屍人荘の殺人」です。

 


監督は木村😀ひさし。TRICKにて助監督、演出を務め「警部補 矢部謙三」や「民王」で監督を務めていたそうな。テレ朝の「金曜ナイトドラマ」枠ですね。実家ではテレ朝なんて映らなかったので、新聞のテレビ欄で金曜ロードショーの隣にある金曜ナイトドラマの内容を勝手に妄想して楽しんでました。こーいうやつは実際に観れる環境になると観ないんですよね。怠惰な人間だ。

脚本は蒔田光治。この人もTRICKにてやってたそうな。気心知れた人たちで作られた映画ですね。


主演は子役時代から最盛期を迎え続けている男、神木隆之介。芸歴の長さ、業績のデカさなんて何のその、齢26歳にして「推理小説オタクのヘタレ大学一年生」を熱演しています。ヒロインは「ねじの外れた美少女」をやらせたら天下一品、浜辺美波。脚本の蒔田さんがNHKでやってたドラマ「ピュア!〜1日アイドル所長の事件簿〜」で主演の売れないアイドル黒薔薇純子を演じていたのですが、これが凄まじくかわいい。かわいい!!だけで感想が終わってしまうくらいなーんもない娯楽作ですごく爽快だったので、今回の「屍人荘」にもそれを期待して観に行きましたが、期待以上の可愛さです。主人公の先輩の「自称ホームズ」に中村倫也。あんまりこの人に意識割いて映画を観たことなかったんだけど、かなりよかった。メイクと衣装のせいでカッコ良さはガクッと落ちてたけど笑

 

 

神紅大学の一年生である葉山譲は、今日もミステリー同好会の唯一の先輩である明智恭介に振り回されていた。「神紅のホームズとワトソン」と呼ばれている(実態は明智が呼ばせている)彼らは、今日も街で起こる事件を解決したり、一層事態を深刻にさせて逃げたりしている。

そんな彼らの前に現れた剣崎比留子。彼女は彼らに「ロックフェス研究会」の合宿に来ないかと誘いをかける。部室に届いた脅迫状。去年の合宿で行方知らずになった参加者。そして、山奥に佇む洋館。葉山はそんなミステリアスな要素がどーでもよくなるくらい彼女の可愛さに夢中だった。二人はその案に乗り、合宿が開催される「紫湛荘」へと向かった。

合宿のメインイベントであるフェスが終わり、「紫湛荘」へと辿り着いた一同。宿に困った招かれざる客や洋館のオーナーであるロックフェス研究会OB、彼がナンパしてきた女の子などが各自の部屋へ戻り、一晩を明かす。そして翌朝、ロックフェスの研究会会長が変わり果てた姿で発見される。部屋には「いただきます」「ごちそうさま」の置き手紙。しかし、これは彼らが味わう悲劇的な体験のほんの一部にすぎなかったのだった…。果たして犯人は誰なのか。そして、彼らは無事にこの危機的な状況を抜け出すことできるのか。

 


「洋館」と「密室」。この2フレーズを聞いて心踊らない人はいないのではないでしょうか。ミステリーに関する知識がコナンと「実に面白い」東野圭吾で止まっている俺でさえ、「謎」の予感がする洋館に招待されたらクッッッソニヤニヤしてしまうと思います。探偵ものがすきな彼らにとってならなおさら、不気味な洋館へ招かれるという状況は垂涎ものでしょう。

しかし、ミステリーマニアたちと「洋館」との出会いはやけにあっさりしています。「これから起こる惨劇」を予想させてくれるような寂れ方も、「何かが息を殺して潜んでいる」ようなものものしさもありません。ただ、坂を登ったら見えてくるだけ。

ポスターのポップなフォントからは程遠い、細くて赤い簡素な字体で現れたタイトルコール「屍人荘の殺人」とともに、「紫湛荘」は彼らを無愛想に迎え入れます。


この映画、冒頭部に限らずミステリーをやる上で重要な「嫌な空気」がありません。洋館内のセットも古風な武器やそれっぽい部屋があるだけで、なぜか不気味さを全く感じませんでした。なんでだろうな。画面の彩度が高いから?わからん。まぁこれは全部観終わり、製作者たちが「何をしたかったか」を考えれば割と悪くないプランだとは思いますが、期待外れでちょっとがっかり。堤さんの「近寄ってはいけない」匂いがこちらにもぶんぶん伝わってくる画作りを見てると、物足りなさを感じます。

 


じゃどこがよかったかというと、くすりと笑わせるようなところ。俳優さんたちが伸び伸びと変な人を真面目に演じていてこっちまで笑顔になります。

特に「Wヒロイン」神木隆之介浜辺美波の掛け合いは最高。少し舌足らずな浜辺さんがとぼけたことを言うだけでもう面白い。彼女は橋本環奈と同じようにコメディエンヌの才覚があるはず。そんな彼女にみっともない恋心(下心)を爆発させる神木くんも最高。そして名前が「明智」なのにホームズを自称する中村倫也も、クドイ性格を爆発させてて良い。「サラリーマンNEO」でお馴染みの池田鉄洋さんのヅラネタは、心が小学二年生の私のツボにどハマりしました。本来なら上司の生瀬さんの役割なのにね笑。

あと、浜辺美波の衣装がかーわゆい。他の人たちがいかにも「ザ・大学生」な無個性パーカー着てたりフェスということで動きやすい格好できている中、ダークレッドのワンピースに白地、黒リボンのハット、やたらと角ばった皮のバッグと一人だけ大正時代からやってきたような格好でこの館にやってきます。こんな時代錯誤な格好をお笑い草にせず、彼女はビシッと着こなします。似合う。可愛い。驚きの可愛さを発揮します。

 


キャラの魅力だけでいえばかなりいい線いってます。がしかし、切迫感やシリアスさがうまく出しきれなかったのはうーんというところ。オチもひどい笑。でも、予告編のあのポップさが気に入った方はこの映画は結構ノレるはずです。軽ーい気持ちで観にいけば楽しめるし、ミステリーとしてもトリックがしっかりしていて面白いのでお得感マシマシです。ミステリーではありますが、全年齢対象であるためグロいシーンはありません。誰かと一緒に観に行っても大丈夫でしょう。Wヒロインの可愛さにワーキャー言いあってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

最後に、この映画を観てみようかと思ってくださった方へ。


この映画にはある「謎」が仕掛けられています。その謎の片鱗は、予告編で「小さな違和感」として既に登場しています。

その違和感と、あなたがこの物語について知っていること、ここで提示された情報を組み合わせると、答えに辿り着けるかもしれません。

 


映画『屍人荘の殺人』予告2【2019年12月13日(金)公開】

 

目の前で起こった出来事によって未来に何が起きるのか?

君にもわかるはずだ。 『明智恭介』

 

気が向いたらネタバレ全開のやつも書きます。