アジの缶詰と新しい世界
こんにちは、トサカです。
アジカン。味の缶詰ことアジアンカンフージェネレーションというバンドが好きです。ボーカルのゴッチこと後藤正文と、初見では絶対に顔を見分けられないギタリスト、ベーシスト、ドラマーの四人で構成されています。
味の缶詰という名前の通り、さっぱりとしたサウンドが特徴です。ゴッチのごてっとした歌い方や、伊地知さんのなかなかに変態じみたドラムさばきなど、こってりしそうな要素はたくさんあるのに、この四人で音を作ろうとするとなぜか淡泊でクセのないサウンドとなります。この辺の上手さはサウンドをまとめ上げる人の手腕なのでしょう。非常に好みです。
アルバムとしては「マジックディスク」が好きです。初日当初はわりとファンの人からも疑問におもわれてしまっていた内容なのですが、自分は結構好き。淡泊と疾走感が全てだと思っていたアジカンが真剣におもちゃで遊んでみたようなCDです。このアルバムを経てアジカンの曲がよりカラフルになったように思えます。
このアルバムを発表したあたり(ちょうど新世紀のラブソングを出した頃かな?)に、ゴッチが「情報をなるべく多く乗せるためにラップのようなアプローチを仕掛けていきたい」と語っていました。当時は新世紀のラブソングの斬新なアプローチを前に「すげぇ!」と感心していましたが、今の彼らのストレートにメロディを歌い上げる路線の方が似合ってると思います。でも、新しい曲にこの時期の遊びの影響が各所に見出だすことができて楽しいです。(そして、新世紀のラブソングは名曲であることに変わりはありません)
一番好きな曲は「新しい世界」です。
ぱりっぱりの音が鳴るギター、ぶいぶい言わせるベース、火花のように激しく燃えるドラムの16ビートがこの曲を加速させていきます。イントロからもう最高。
歌詞のテーマとしては割とよくある「型にはまるのではない。自分の道を往け」というものなのですが、テーマへの迫り方が本当に大好きです。ゴッチは自分の住む世界である音楽の枠組みの中で、このテーマに至ります。
大声で叫べばロックンロールなんだろ?
そんなクソみたいな話はもうたくさんだよ
それがなんなのかなんてどうだっていいから
目の前の景色を全部 塗り替えるのさ
という風に、ロックンローラーなら一度は考える「ロックの定義」についてAメロで考えさせます。しかし、あっさりが持ち味のアジカン、Aメロ内でさっさと解決し、次のステップへ進みます。
退屈な夜はAのコードを
三角形でかきむしれば
指先 開放二弦の刹那と
想像力で 世界が変わる
ぼくはこの曲でここが一番好きです。
ギターを弾いていることが最初の方で分かります。そして、ピックのことを「三角形」というほどにしか捉えられないほど、弦を弾く感覚が研ぎ澄まされていくゴッチの「集中」を、イヤホン越しに追体験することができます。
自分にとって手垢にまみれているはずの武器(ギターやピック)をぼんやりとしか認識できなくなるほど没入し、その感触をじかに感じたとき、そしてそこに想像力をうまく乗せられた時、世界を変えられる。
ここを初めて聴いた時はぶっ飛びました。シンプルだけど難しい。難しいけれど、ばっちり目が覚める。そんな曲です。
というわけで、皆さんも鯵の缶詰、ぜひ食べてみてください。
ではでは。